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計算社会科学による人間行動と社会現象の理解

現在、人々はウェブを能動的に利用して情報を発信・共有し、実世界とは違うかたちのコミュニケーションを行っています。そして、それは実世界をも変える力を持ちます。

私たちは、ソーシャルデータを題材として計算社会科学を研究しています。例えばTwitterは「世の中の今を伝え合う」ツールで、ユーザは今どうしているのかを140文字以内でつぶやき、別のユーザがつぶやきで反応し、その連鎖によって瞬く間につぶやきが伝搬します。このようなリアルタイム性・ネットワーク性が高いオンライン・コミュニケーションの動的特性と、その結果として創発し、進化し続ける情報生態系の発展様式を分析します。また、大規模ソーシャルデータを入力として、人々の社会行動を効率的に定量化するような解析手法を開発し、分析結果に基づくモデル研究も行います。

コミュニケーション進化の人工生命モデル

コミュニケーションとはメディア(媒体)を介した動的な相互作用で、メディアや社会の変化と共に進化する行動です。このような動的でオープンエンドな特性を明らかにするためには、「今ここにあるコミュニケーション」を分析するだけでは不十分です。そこで、「あり得るコミュニケーション」をコンピュータの中に構成し、モデルの振舞いの中にその本質を見るのが人工生命(Artificial Life)による構成論的な分かり方です。

コミュニケーションを複雑系として捉え、ヒトの言語的コミュニケーション(例: 言語の進化)や動物の原初的(前言語的)なコミュニケーション(例: 鳥のさえずり)などのモデルを作り、動かすことによって、コミュニケーションの進化ダイナミクスを研究します。さらに、来るべき新しいタイプのコミュニケーション(例: ヒトとロボットの対話)のデザイン原理を提案します。

生物の行動文法のモデル

ヒトと動物を計算能力の観点から比較するという考え方が登場し、言語進化研究は大きな転換期を迎えました。特に重要なのが「広義の言語機能」(FLB)と「狭義の言語機能」(FLN)という考え方です。FLBはヒトと動物に共通する一般的な認知能力、FLNは物事を階層的に操作する計算能力(再帰)のことで、FLNとFLBの相互作用によって言語が成立すると考えられています。この仮説が提唱されて以降、生物の行動に「再帰の萌芽」を探す試みが盛んに行われるようになりました。

本研究では、生物の行動文法(Action Grammar)の構造特性を様々な動物種間で比較し、再帰など複雑な行動を生み出す計算能力を定量的に明らかにします。さらに、行動文法の有効な解析手法を開発し、情報行動を統一的に理解するための枠組みを作ります。